グランド・フィナーレ | 今月の10冊

グランド・フィナーレ

▼この本に関する情報▼

阿部 和重
グランド・フィナーレ

「芥川賞受賞」ということで、軽い気持ちで手に取った(それがいけなかったのかもしれない)のだが、ページ数の割りに読み終わるまでにかなりの時間を要してしまった。
ミステリー小説を読んでいるときの「怖いけどとにかく早く先を読みたい」感情と正反対の気持ちといったらいいのだろうか。なんだかページをめくるのが怖かったのである。読み終えた後は、書評はどうしようか……と困った。

 

正直な感想を言うと、あとあじが悪く、読後はなぜか疲れ果てていた。ただ、書評を書かなくてはならないから、という理由ではなく、途中で読むのをやめてしまおうという気にはならなかったのが不思議だった。それは阿部和重さんの力によるものなのだが。

 

単にテーマやストーリーについて好き嫌いを言えば、私の好みではない。ただ、好き嫌いを超えて、この作品に魅かれているのだ。阿部和重の世界は私には届かないところにあり、そこの世界を楽しむところにまで行けない気がする。ただ、少しでも近づこうとして『シンセミア』を今読んでいる。怖くてものすごいスローペースでしかページをめくれないけれど。 (トウマキョウコ)