さおだけ屋はなぜ潰れないのか―身近な疑問からはじめる会計学 | 今月の10冊

さおだけ屋はなぜ潰れないのか―身近な疑問からはじめる会計学

▼この本に関する情報▼

山田 真哉
さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学

キャッシュフローという言葉をよく聞くけど、損益との違いが分からない。在庫を減すべきだという話を読んだけど、その意味がはっきりと理解できない。このあたりを曖昧なままにしておくと、ノリと勢いだけでビジネスに取り組むことになることは必至だ。キーワードは「会計」。簿記をまったく知らない人、「会計なんかどうせ役に立たない」と思っている人は、『女子大生会計士の事件簿』などで人気の会計士・山田真哉氏の近著を是非手にとってみてほしい。

 


書名の「さおだけ屋」のエピソードは、やや強引な展開になっているきらいもあるが、興味を引く話の内容に思わずページが進むことだろう。おまけに、通常の会計の本では当たり前すぎて触れられもしていないような、「なぜ、掛取引が存在するのか?」というような根本的な論点についてもかみくだいた説明がされており、会計に拒否反応のある人にもとっつきやすい。一方で、「回転率」という計算方法で大まかに数字を捉えることの重要性や、「50人に1人が無料」という某航空会社のキャンペーンをテーマにしての数字のセンスの磨き方にも話が広がり、単なる会計の入門書というレベルを超えた深さもあって、会計の基本を知っている人にも興味深い内容になっている。著者の意図するとおりこの本を読んでから、さらにどこかに眠っている会計の本を再び開いてみれば、きっと前とは違った世界が広がるに違いない。  (高橋英之)