正しい保健体育 | 今月の10冊

正しい保健体育

▼この本に関する情報▼
正しい保健体育/みうらじゅん 著(理論社)

 「もうひとつ、あたりまえのことですが、小・中・高で男女交際は禁止です。国会でそう決まりました。たとえ女性に告白されても、「俺いま自分塾だから」と断らなくてはなりません。もちろんセックスは20歳からと、国会で決まっていることぐらいは知っていますよね。」

 ええっ!!「自分塾」って何??

 中高生男子がおもしろくてやさしい大人になるための、こんなに切実な(憶測)妄想の育て方と生き方説法が、こんなに買い易い表紙で書店に山積みになっているんだから、行け! 買え! 読め! そして女子を泣かすな! 殺すな! と、つい熱くなってしまいます。

 みうらさんはこれから仏門に入る予定と書いてありましたが、もう既に隠しテーマで釈迦の教えの入門書にもなっている気がします。

 局部の断面図を胎蔵、金剛界曼荼羅に例えて、眺めて瞑想するためのものと言い切るなんて!

 しっかり実践していくと戦争もなくなり、「いい抜け殻」になって死ねるように、壮大なスケールでつくられています。

 めちゃめちゃ俺流というかみうらさん流ですが、大まじめです。『見仏記』を読んだ時に、みうらさんのことばやふるまいの、自分へのうそのなさにくやしいくらいに惚れ惚れしましたが、その勢いのまま、女性という「スカイフィッシュ」で宇宙と交信する生き物の真ん中に五感ひとつで突っ込んで行きます。「スカイフィッシュ」とは何か? それは本文を読んで下さい。索引からも引けます。

 冗談もたっぷり盛られていますが、本当にこの本の対象になっている男子たちは、きっと、実地で「違うじゃん!」と叫んだりしながら判っていけばいいのです。

 そして、大切な人も見つかって、いい塩梅にくたびれてきた時に、どこが変化球だったのか、もう一度確かめる為に、本棚に差し込んでおくと人生が何倍かたのしくなるでしょう。 

 思い切り男子向けなので、ほかの性の人向けの正しい保健体育の本も読みたくなりました。でも、思わぬ暴発から身を守るための本として女子にも有効です。

 悩める息子さんが「人として正しい道を歩む」ための最初のミッションの本と思うので、親御さんが、読ませていいのかどうか迷う必要はないと思います。この人気です。自力で手に取る日はすぐに来ます! (松本典子)