くみこの掟 | 今月の10冊

くみこの掟

▼この本に関する情報▼
くみこの掟/武田久美子 著(講談社)

 シャドークンニ60分&手マン素振り1000本&チン立て伏せ200回を己に課し続けて早十余年。「継続は力なり」「石の上にも3年」「桃栗3年柿8年柚は9年で成り下がる梨のバカめが18年」の故事(最後のは故事というより大林版『時をかける少女』)に習い、俺が一日たりとも怠らず性奥義の修練に勤しんでいるのは、俺たちの世代のSEXシンボル・武田久美子さんとの、いつ実現するともわからない究極の一戦に備えてのことに他ならない。なんといっても武田久美子といえば貝の妖精、「貝の上に貝をのっけて隠す」という小粋な戦法を編み出したセックスアピール界のスペシャリストであり、生半可なラーゲ(ジャンプ読みながら豆いじりetc)で攻略できるほど甘い方ではない。入念に「掟と久美子、もし戦わば」を想定するに飽きたらず、全国のありとあらゆるお狸様の祀られたインディーズ神社でお百度踏みまくったりと、神頼みまで駆使して武田久美子さんをモノにすることに執着してきたのだった。

 ……で、必死の水ごりにお狸様も根負けしたのか、なんか書店に行ったらこんな本が! 『くみこの掟』ですてよ、いやマジで!! 俺、掟ポルシェを激しく意識したこと鉄板なこのタイトル、どーですか!! 「掟さんはくみこのものよ!」って宣言と取っちゃっていーんじゃないかなぁ(余裕)。しかしまだ一度も逢ったことないのに、通じ合うことってあるんだなぁ……。工藤静香の『MU・GO・ん…色っぽい』のワンランク上行ってる出会いっつーの? ♪目と目で通じ合う、以上のとんでもなくハイレベルな通じ合いっぷりですよ、いや~マイッタ~!

 ……しかし、背表紙の写真で明らかにハーフの乳幼児を抱いているので、なんじゃこれはと不審に思い読み進めていくうちに、武田久美子さんは現在サンディエゴに移住してアメリカ人の旦那様と御結婚され、彼との間に娘のソフィア・百花ちゃんをもうけていらっしゃることが発覚……。しかめっ面でなにくそとシャドークンニに打ち込んだ日々の努力は、一瞬にして泡と消えた。

 本著は世の男性諸氏にとって常に一線級のいい女であり続けた武田久美子が己が半生を回顧し、女性を磨くための哲学を今度は女性読者に伝授するスタイルになっている。世の女性たちはこれを読み倒して「くみこイズム」を注入し、己の血肉としていただきたい。煌びやかな貝殻水着一丁で街を闊歩する女性たちが、今後増えそうな予感がしている。
(掟ポルシェ)