落としの技術 | 今月の10冊

落としの技術

▼この本に関する情報▼
落としの技術/北芝 健 著(双葉社)

 実は、私の妻の父は警視庁捜査二課の刑事だった。妻をもらいに、実家で義父と向かい合ったとき、客間の雰囲気は取調室に変貌した。「ダンナ、全部吐きますから」。そんなセリフが口をつきそうなくらい、私は追い詰められた。私は、刑事が持っている独特の威圧感に追い詰められていた。

 ところが、この本をみると、そんな簡単な被疑者ばかりではないようだ。著者の北芝健氏は、テレビにもしばしば登場する元警視庁の刑事だ。この本には、刑事が使う「落とし」の技術の粋が集められている。

 被疑者を落とすということは、結局いかに被疑者と心を通わせるかということだ。被疑者の様子を細かく観察し、バックグラウンドを調べ、小さな共通点をみつけて共感を得る。その後、被疑者を持ち上げ、必要に応じて戒める。本書にはそうした落としの技術が、実際の取調べの実例を示しながら豊富に紹介されている。

 こうした落としの技術は、営業活動や異性を口説くときの技術とほとんど同じだ。刑事の落としの技術を覚えておくと、思わぬところで役立つだろう。