考える技術 | 今月の10冊

考える技術

▼この本に関する情報▼
考える技術/大前研一著(講談社)

 今から12年ほど昔、こころも脳も非常にフレッシュな新入社員時代、先輩がはじめて推薦してくれたビジネス書が大前研一の『企業参謀』(プレジデント社)であった。夢と希望に満ちた新人時代、この本を読んで、自分もビジネスエリートを目指すのだと意気込んでいた自分自身を思い出すと、少し気恥ずかしい。
 今回の『考える技術』の根っこはその『企業参謀』で説かれていた論理的思考力である。この論理的思考力を身につけるための道のりは相当難関である。まず何事もそのまま受け入れるのではなく、自分で考える癖をつける。考えることは自分に質問することであり、問題解決力であるという。問題解決力を身につけるためには、仮説・検証・実験という科学的思考が有効である。また、現代の経済・社会は方程式を当てはめれば必ず正解が得られる線形思考ではなく、複雑系の世界であるため、非線形思考が必要だ。勝ち残るには最低でも5年先の世界を見通す思考力が必要だという。知的に怠惰な人は生き残れない。厳しいが、これが事実だろう。
 久しぶりに大前研一の本を読んで、いかに日ごろ、頭を使っていないかを思い知らされた。本当に身が引き締まる。この書評を書いていたら、年が明けた。毎日続けている筋トレのメニューに「脳の筋トレ」を取り入れようと思う。今年こそ知的ビジネスマンを目指そうとしている方、もしかしたらまだやり直せるかもと思っている悩めるビジネスマンの方々には非常に良く効く脳のビタミン剤になる一冊です。ただし、栄養価が高すぎ、吸収しきれず、すべて放出される可能性もあり。 (なみへい)