すまなきゃわからない沖縄 | 今月の10冊

すまなきゃわからない沖縄

▼この本に関する情報▼
すまなきゃわからない沖縄/仲村 清司(新潮文庫)

「いつか沖縄に移住したい」。沖縄を一度でも訪れると、そうした「沖縄病」にかかってしまう人が多い。かくいう私もその一人だ。初めて訪れた21年前から毎年沖縄に通い、虎視眈々と移住のチャンスを狙っている。この本はそうした沖縄病にかかった人のために書かれた沖縄の本だ。青い海と広い空の常夏の島。そんな観光パンフレットの世界とは確実に違う生活が沖縄にはある。著者の仲村清司さんは大阪からの移住者だ。しかも妻の沖縄病につき合って移住した。だから、沖縄のよいところも悪いところも、実に客観的に捉えている。しかも、都会人としての視点を忘れていない。そこが、実に貴重なのだ。

 軽快でユーモラスな文体のおかげで、スラスラ読めてしまうが、沖縄病21年の私には思い当たることが多い。部屋中にわきだしてくる蟻、いい加減な時間感覚、なんでも飯の上に載せてしまう弁当。そうしたもの全てを受け入れないと、沖縄には住めないのだ。

 すでに沖縄病にかかっている人にも、これからかかりそうな人にも、移住前に必読
の書だ。(森永卓郎)