食べていくための自由業・自営業ガイド | 今月の10冊

食べていくための自由業・自営業ガイド

▼この本に関する情報▼
食べていくための自由業・自営業ガイド/本多信一(岩波アクティブ新書)

 通勤電車の中で本を読んでいる自分へ、なぜか同世代と思しき会社員たちが視線を送る。無精ひげをはやし、ノーネクタイのスーツに身を包んだ38歳のサラリーマンが手にとっていたのは『食べていくための自由業・自営業ガイド』という書籍だった。

 会社員をしていると、一度や二度は独立を夢見るのは、当たり前。1回でも転職を経験した方なら、理解してもらえると思うが、転職しても「雇われの身」であることには変わりない。やはり目指すところは独立なのだ。本書は独立・開業指南書とは何か違う。よくある「こうすれば、あなたも成功します」的な眉唾的な指南書ではなく、非常に親身な人生相談書であった。そういう意味では独立開業して、一儲けしてやろういうスケベ心を持つ方には別の指南書がいいだろう。

 独立・起業に関する本を読むのは、非常にわくわくする。なぜって? いつ自分にぴったりはまった職種・職業が出てくるかと期待しながら読み進めるから。まずは各種販売代理店行政書士事務所といった無難なところから職業紹介が始まる。うーん、これってよくあるけど、自分には向いてないと、かるく流す。整体師、焼き鳥屋、便利屋、おっ、これなら自分にもできそうだと、ちょっとわくわくしてくると、NPO法人、牧師、神官といった厳かな職業も登場する。さらには美術家や陶芸家だって、立派な自営業だとくる。かなり奥が深い。つまり、どうせやるなら、まずは自分の好きなことを考える、ついでに人の役に立てたら、なおハッピーだと。もちろん著者そんな軽いノリではなく、社会貢献を考えることも大切だと説く。ここらへんで、私の柔な夢は打ち砕かれていく。

 著者曰く、会社員中心の社会に慣れてきた日本人は職業に対する意識が未熟だと。会社員が一番安心と信じ、会社に頼った生き方をしてきた人にとって受難の時代になるのだ。非常に身につまされる。また、人には会社員に適正のある人、自営業・自由業に適正のある人に分かれると言う。自分が自営業・自由業に向いているという自信はないが、サラリーマンである自分も会社に頼らず、いつでも独立できるようなプロ意識をもって、仕事に打ち込もうという意欲がわいてきた。

 最後に皆さん、ご安心を。本書によると、統計上、日本には3万職種以上の職業があるらしい。きっとこれだという職業が見つかるような気がする。(なみへい)