知りたい人・答える人のための資産運用のABC | 今月の10冊

知りたい人・答える人のための資産運用のABC

▼この本に関する情報▼
知りたい人・答える人のための資産運用のABC/日高誠司(近代セールス社)


1987年に119万7千円で政府が放出したNTT株は、1ヶ月足らずの間に300万円をつける狂乱をみせた。当時、株式投資をやらない者はアホであるという雰囲気が流れ、借金までしてNTT株を買った者がいた。90年に同株が72万円までの暴落した時、「騙された!」という声があふれる裏で、うまくNTT株を売り抜けほくそ笑んだ者もいた。それからだ、大きな会社が潰れ、年金問題が喧しくなり、「自己責任」という便利な言葉がこの国で、着実に浸透しはじめてきたのは。

資産運用は、自己責任という言葉が支配する最右翼の世界である。国自体が自己責任という言葉をくりだしてきている状況では、アクションを起こさないこと自体が大きなリスクになってしまう可能性もある。せめて、資産運用とはどういうものなのかだけでも頭にいれておくために、『資産運用のABC』を一読して欲しい。

本書は、資産運用の基本的な考え方や、根本に立ち返っての取組み姿勢のようなものを伝えようとしている。野球の打順編成になぞらえての分散投資理論のユニークな解説がある一方で、「非常に強いストレスを感じるようであれば…身の丈を越えがんばりすぎている可能性がある」という戒めがある。金融機関で投資のプロでもあった筆者自身の投資経験を踏まえた気づきがあふれており、単に投資の入門書を超えて、自己責任という言葉について考えるためのよいきっかけとなるに違いない。(高橋英之)