ヒロシです | 今月の10冊

ヒロシです

▼この本に関する情報▼
ヒロシです/扶桑社

 昨今はお笑いブームだそうで、巷では野坂昭如のロシアンフックでメガネを吹っ飛ばされた大島渚がマイクで殴り返したり、米良美一が加藤鷹と同じヘアスタイルでもののけ姫を熱唱するときの唇がちょっとアヌスっぽかったり、TBS「ジャスト!」のお部屋改装し隊に出演した一人暮らしのOLの部屋が大御堂先生によって数十万円かけてメチャメチャアバンギャルドな学芸会みたいに改装されたりと、我が国は様々な種類の笑いで溢れ返っている状態。その一方で笑いの需要と供給のバランスは過食症の如く崩れ、着物姿でギターを抱えた藤原敏男似の男が当たり前のことを大声で叫ぶのが「お笑い」のカテゴリに入っていたりして、ブームというものの功罪に翻弄される現状である。

 お笑いブームの寵児の一人であるヒロシの芸風は、笑いにするしかない日常の悲哀の吐露。シャンソンをバックにホスト風の優男がしゃべる抑揚のない熊本弁が、情けなさを対位法的に浮かび上がらせている。しみったれた情景のバリエーションをひたすら羅列していく一言ネタスタイルは、実際それほど爆発的な笑いを生むものではないが、なんとなく情けないことがあったときマネしたくなる点で秀逸だ。

オキテです……
フルフェイスのヘルメット&上半身セーラーズ下半身裸で出刃包丁を持ってコンビニでピザまんを買おうとしたら、ラガーメン風のガタイのいい男性会社員に事情も聞かずタックルされたとです……
「ファッションに反則はない」とヴィヴィアン・ウェストウッドも言ってたのに納得いかんとです……
オキテです……
オキテです……
オキテです……

我が身に当てはめたが応用例として不適当だったので、この本を読んでみんなちゃんとヒロシするとです…… (掟ポルシェ)