デフレはなぜ怖いのか | 今月の10冊

デフレはなぜ怖いのか

▼この本に関する情報▼
デフレはなぜ怖いのか/原田 泰(文春新書)


 バブル崩壊以降に日本経済が陥った長期不況は、日本経済が抱える構造問題が原因というのが、主流派エコノミストの診断だ。90年代に膨大な公共事業を実施しても、ゼロ金利に至るまで金融を大きく緩和しても、日本経済は復活しなかった。だから、あとは構造改革しかないというのが、いまの主流の考え方なのだ。

 著者の原田泰氏は、こうした主張に真っ向から反論する。日本経済が不振に陥った原因は、デフレに陥ったことが原因だというのだ。

 原田氏の主張に同調する経済学者は多いのだが、原田氏の考え方が広く知られることがなかったのは、彼の著作が厳密な計量分析を含んでいて、経済学と統計学の基礎知識がないと、読みこなすのが難しかったからだ。
本書は、原田氏のこれまでの著作のなかから、統計的検証の部分を思い切って切り落として、一般読者に読みやすく書き直したものだ。
デフレとは何か、デフレはなぜ悪いのか、なぜデフレが続いているのか。それを、分かりやすく解説している。特に、結論部分は多くの読者にとって衝撃的な内容だろう。
私は、原田氏の主張は、正しいと思う。日本経済の姿を、通常とはまったく違った視点から見つめなおしてみたい人にお勧めの本だ。 (森永卓郎)