イージーゴーイング | 今月の10冊

イージーゴーイング

▼この本に関する情報▼
イージー・ゴーイング/山川健一著(アメーバブックス)

自己啓発系の本が売れている。プラス思考で頑張れ!人生の勝ち組になろう!しかし、そんな人生のHOW TO通り、いつもポジティブでいられるほど人間は単純じゃない。
今回ご紹介するのは山川健一氏の新著『イージー・ゴーイング』だ。著者には、十代の頃から変わらない座右の銘があるという。

<無理するな>

そんな彼が書いたこの本も、大きく分類すれば自己啓発系の本である。しかし、その内容といえば脱自己啓発のススメなのだ。

(以下本文からの引用)『「目標をもって生きろ」とか「時間を無駄にするな」とか「あきらめずに頑張れ」とか、そういう言葉は呪文だ。人々を追いつめる呪いの言葉なんだ。そういう魔術に騙されちゃいけないよ。「サクセスした自分をなるべくイメージしてみましょう」。そういうのはくだらないって。サクセスする必要なんてない。負け犬なんてものも存在しない。ありのままの、等身大の自分がいるだけだ。それを大切にしよう。』

この頃、どんなゲームをやっても面白くなかった。例えば、ロールプレイングゲームで主人公のレベルを上げる。熱中しているうちはいい、ある瞬間にふと我にかえってしまう。「こんなレベルをあげてる暇があったら、自分自身のレベルをアップしなきゃ」。こうなると駄目、途端にゲームが味気ないものになってくる。自分も呪いの呪文に侵されているようだ。

第一章「ありのままの自分を知るには、どうすればいいの?」では、自分の好きなものをノートに書いてみようとアドバイスしてくれる。これは是非とも実践して欲しい。自分の好きなものを考えているだけでも楽しい時間が過ごせるだろう。そして、次章では、好きな曲を見つけて、それを「キメ曲」にすれば一ヶ月は元気でいられると教えてくれる。さすがは永遠のロックキッズ、山川健一氏らしい発想だ。

この「イージー・ゴーイング」はブログから生まれた本である。アメーバブログの山川健一氏のブログを覗けば、そこで編集会議が読者と一緒に行われているのである。この本の装丁にも、いくつか案があったようだ。あとがきの一文に、こんなことが書かれていた。『ブログとうい場所で、みんなでいっしょに本を作ったんだな、という実感がある』。今、ブログが流行りであるが、そこから一冊の本を生むこともできるのだ。

この本のサブタイトルには「頑張りたくないあなたへ」とある。しかし、これは逆説的なメッセージだ。ぜひ、頑張っている人に読んでもらいたい。肩の力が抜けて、明日からもっと頑張れるから。(山下惣市)